2月:青い麦畑
―ウクライナ通信(2):青空の下、広大な麦畑の拡がる美しい国です―
新型コロナウイルス感染症も、5月8日とうとう5類感染症に変更され、インフルエンザ並みの扱いとなりました。それにつれ種々の行動制限も大幅に緩和され、今年のゴールデンウイークの行楽地は、どこも観光客でごった返し、外国人旅行客もどっと増え、久しぶりに賑やかさを取り戻しました。いろいろなイベントも3年ぶりに復活し、私たちの周りも急に慌ただしさを増して来たような気がします。今後、新型コロナウイルスの新しい強毒な変異株が現れない限り、昔の日常が戻って来ます。これはほんとうに嬉しいことですが、ただ今まで何度も繰り返していますように、高齢者、特に70歳以上の方はくれぐれもご用心ください。スーパーや電車の中など、不特定多数の人の集まる場所へ行かれる場合には、当分の間マスクを着用してください。6回目のワクチン接種も必ずお受けください。それが自分の身を守る一番大切な方法なのですから。
今回も引き続き、ウクライナ通信をお届けします。私たちにあまり馴染みのない国、ウクライナ、その風土について簡単に触れ、前回紹介致しましたNPO法人SunPanSaの会によるウクライナ傷病者に対するリハビリ治療の支援活動について、その後の経過を報告致します。
さて季節は冬に逆戻り、里山のモノトーンで寂寥とした風景の中で、ひときわ鮮やかな黄緑の色を添える麦畑を見つけますと、一瞬寒さも忘れ心嬉しくなります。しかも青い麦畑は、冬から早春、晩春と、季節が進むにつれて色調が微妙に変化し、やがて初夏を迎えて麦秋の世界となります。そこで今回は、その麦畑の変化の様子をお伝えします。
左はウクライナの二色旗です。上半分の青は青空、下半分の黄は広大な麦秋の畑を表わしていると言われます。 なるほど前ページの写真を見ますと、それも頷けます。 ウクライナの現在の国旗は、1992年ソ連から独立した時に正式に制定されました。総務省総計局の資料によりますと、2022年におけるウクライナの小麦生産量は世界7位だそうで、黄色が麦秋を示すことは納得できます。 |
一方、ひまわり畑であるという説もあり、そう言えばソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニの共演したイタリア映画「ひまわり」には、ウクライナの大ひまわり畑が登場しました。「ひまわり」は、国民に広く親しまれている国花でもあります。 |
1)国土:ウクライナの国土面積は約60万3,700km2で、日本の約1.6倍、ロシアを除くヨーロッパ諸国の中で最大です。国土の95% は平原で、その中央をヨーロッパ第3の大河ドニエプル川(ウクライナ語でドニプロ川)が縦断し、キーウ、ドニプロ、ザボリージャ、ヘルソンを経て黒海に注ぎます。
2)気候:ほとんどが温帯大陸性気候で、クリミア半島南岸部のみが亜熱帯または地中海性気候です。月平均気温は、もっとも低い北東部や山地部で1月-7~-8度、最も温かいクリミア半島南岸で-2~-4度、7月はそれぞれ17~18度、22~23度ぐらいだそうです。
3)人口:ウクライナ国家統計局によれば、2021年におけるウクライナの人口は4,159万人(クリミアを除く)ですが、戦争の始まった2022年には戦死や国外避難などにより数百万人規模で減少しているものと思われます。民族としてはウクライナ人が約80%を占め、ついでロシア人20%弱となっているそうです。
さてウクライナ傷病者のリハビリ治療支援活動ですが、4月10日に傷病者6名とそのご家族2名の計8名が来日されました。うち3名は現在、済生会明和病院にて義手の作成とリハビリ治療を受けておられます。
右の写真はそのうちの一人の方で、左の義手を使いながら切り絵の練習をしているところです。最近では、ペットボトルを開けたり、靴紐を結ぶこともできるようになったとのことで、「手を失ってから初めて自分で靴紐が結べた」と喜んでおられます。一連のリハビリが完了するまでには、最短でも7、8か月間の通院治療が必要とのことです。 |
現在3名とも松阪市内に在住で、2名は一軒家で共同生活を、1名はご家族2人と一緒に別の住居で生活しておられます。皆さん、一緒に買い出しに出かけたり、日本語の勉強も始めておられ、また毎日団体メンバーが訪問し、日々の悩みの相談などを受けています。
残り3名の傷病者は、私どものお薦めした治療方針に同意の得られなかったことや、治療期間が半年以上と長くウクライナに残して来た家族が心配だとの理由で帰国されました。
ウクライナの方々の言葉です。「私達には家族が二つあります。一つは血のつながった家族、もう一つはウクライナで祖国を守るために戦っている同胞です。」
一方、ウクライナ傷病者リハビリ支援のためのクラウドファンディングですが、おかげ様で5月13日現在1,140万円を超えるご寄付をいただきました。皆様方の温かいご厚情に心より御礼申し上げます。これからも傷病者をお迎えし、この活動を継続するためには、まだまだ費用がかかります。クラウドファンディングの締め切りは5月26日で、まだ少し時間が残っていますので、さらなるご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
治療を受けられずにいるウクライナの傷病者へ、日本でのリハビリ支援を(NPO法人SunPanSa 2023/03/30 公開) – クラウドファンディング READYFOR
参考文献:「ウクライナを知るための65章(電子書籍版)」(服部倫卓、原田義也編著、2022年4月5日発行、明石書店)
令和5年5月14日
桑名市総合医療センター理事長 竹田 寛 (文、写真)
竹田 恭子(イラスト)