C型慢性肝炎は治る時代になりました
桑名西医療センター 内科部長 石田医師
近年、治療効果の高い新しい抗ウイルス薬が相次いで登場しています。ウイルスに直接(Direct)的に作用(Acting)する抗ウイルス薬(Antivirals)の頭文字をとってDAAと呼ばれています。DAAの登場で3~6か月の内服治療で95%以上の患者さんは完治できるようになりました。
C型慢性肝炎は慢性肝障害の原因として最も多い病気です。感染者は国内に約150万〜200万人いると言われています。進行すると肝硬変を経て肝臓癌になる危険が高く、日本人の肝臓癌の約65%がC型肝炎由来です。C型肝炎ウイルスは1989年(平成元年)に存在が証明されて以降、インターフェロン注射を中心とした治療が行われてきました。しかし、日本人に多い遺伝子型1bのC型肝炎は治療効果が低く、インターフェロン治療で治らなかった方や、副作用で治療を中断された方も多数おられます。DAA治療はこれらの方も同様に完治できることが報告されています。「以前インターフェロンで治らなかった」とあきらめていないで、ぜひ新しい抗ウイルス薬内服による再治療を考えられてはいかがでしょうか。
ただし、内服前に検討しなくてはならないことがいくつかあります。C型肝炎ウイルスの遺伝子型で内服するDAAは異なります。
そのほかに、
①肝硬変が進みすぎている人には使えないこと
②腎機能の程度
③持病で薬を内服中の方は飲み合わせ
④耐性ウイルスの有無等が内服前に検討すべき点です。
かかりつけの先生を通じ、専門医のいる医療機関へ御紹介いただき、DAA内服治療を検討されることをお勧めします。
糖尿病について
桑名西医療センター 内科部長
北 川 良 子 医師
糖尿病は、比較的皆さんがよく耳にする病気だと思います。「尿」という文字はありますが、尿に関係する病気ではありません。何らかの原因で血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上昇する病気です。血糖値が高いために、尿の中に糖分がでてくるのです。
病気の初期ではほとんど自覚症状はありませんが、放置すれば気づかないうちに合併症といわれるさまざまな臓器、器官に障害が発生します。代表的なのは、神経障害、網膜症、腎症といわれるもので、重度な方は失明や腎不全からの透析療法にいたる人もみえます。また、動脈硬化も促進しますので、心筋梗塞や脳梗塞の危険性も糖尿病でない人より高いです。その他、あまざまな症状を誘発します。
では、どのようにすればこれからの合併症が防げるのでしょうか。
糖尿病と診断されたら、まず定期的に受診して、血糖値を正常に近い状態にコントロールする必要があります。糖尿病の原因は様々ですが、主に生活習慣特に食生活、運動量に問題があることが多いです。その人の病状によっては、薬物療法、 内服薬やインスリンなどの自己注射などが選択されます。インスリン治療は、自身で作るインスリンが不十分で補充しないといけない人のための治療法です。
大切なのは、病気になったら早く受診して、なるべく血糖値を正常に近づけるようにしていくことです。たとえ正常化しても、血液検査をしないと現在の状況はわかりませんので、定期的な受診が重要です。
西医療センターでは、さまざまな医療スタッフが糖尿病について情報提供しています。不安のある人はご相談ください。
乳がん検診を受けましょう
①乳がんとは
乳房に含まれる乳腺に生じる「がん」のことをいいます。
日本では10万人あたり毎年113人が乳がんと診断され、生涯で乳がんに罹患(りかん)する確率は11人に1人(9%)といわれています。
死亡者数も年々増え、2004年に初めて一万人を超え、2014年には一万三千人を越えました。(出典:国立がん研究センター)
②乳がんの治療
乳がんにかかった場合、ほとんどの人が手術、抗がん剤、放射線治療のいずれかを選択することになります。二つ、三つを組み合わせて治療を行う場合、乳がんの進み具合によってその後の生存期間に差が出てくることが分かっています。
がん研究振興財団の調べによると、がん治療の目安の一つである5年生存率は発見時にⅠ期(しこりの大きさが2cm以下で、乳房の外に広がっていない)で治療した場合99.7%ですが、Ⅲ期(リンパ節移転が進行している、皮膚に顔を出している、しこりが大きい等)の場合は77.9%になるといわれています。
このことから、乳がんにかかってしまったとしてもⅠ期のうちに治療すれば完治ができるということです。それではどうすればⅠ期のうちに治療が開始できるのでしょうか。
③早期発見
乳がん検診を受けましょう。
検診では多くが0期(極めて早期のもの)、Ⅰ期の状態で発見されます。自覚症状がでてから検査を受けて発見される乳がんよりも早期の乳がんが発見され、早期に治療を開始できる可能性が高いのです。
なお、すでに乳房に異常を感じておられる人は来年の検診を持つことなく、外科、乳腺科等を受診していただきますようお願いします。
ファーストエイド(応急手当)
~出血の正しい止め方~
桑名西医療センター 救急科部長 佐々木俊哉医師
けがをすると出血することが多いです。出血が続くと生命に関わることがありますので、出血をなるべく早く止める必要があります。
今回は、医療機関を受診するまで、あるいは、救急隊が到着するまでに、皆さんができる出血に対する応急手当について説明します。
○止血の基本
出血を止めることを止血(しけつ)といいます。止血の基本は、出血しているところを直接、圧迫することです。これを、直接圧迫止血法(ちょくせつあっぱくしけつほう)といいます。
ほとんどの出血は直接圧迫止血法により止血することができます。
○直接圧迫止血法のやり方
応急手当は周囲が安全な場所で行います。
①ガーゼなどが入った救急箱を用意します。感染症から身を守るために、ビニール手袋を着用します。手袋がない場合は、ビニール袋で代用します。
②出血している場所をガーゼ(布やハンカチなど)で覆い、その上から直接、圧迫を加えます。圧迫は、指の平らな部分や手のひらを使います。
③出血が止まるまで、圧迫を加え続けます。ガーゼの上に包帯を強く巻けば、圧迫を加え続けることができます。
④圧迫を加えながらすみやかに医療機関を受診します。
※指や手足の根元を紐などで縛る方法は、訓練を受けた人以外は行うべきではありません。まず直接圧迫止血法を行いましょう。
○次のような場合は直ちに119番通報し救急隊を呼びましょう
①どうしたらよいのかわからない。
②大量に出血している。
③止血できない。
④大けがをしている(転落など大けがの場合は、胸・お腹・骨盤など体の内部で大量に出血している可能性があり、外見ではわかりません)。
~脱水とエコノミークラス症候群~
桑名東医療センター
肺循環器外来(非常勤)
山田 典一医師
4月16日に起こった熊本地震では、被災者の多くにエコノミークラス症候群が生じされたことが報道されました。
本来、エコノミークラス症候群とは、長時間の飛行機旅行の際にできる下肢の静脈の血栓と、その血栓がはがれて流れて肺の血管を閉塞することで生じる肺塞栓症(はいそくせんしょう)をさします。重症化すると死に至る場合もあります。
災害時の避難所・車中泊や長時間の飛行機旅行のいずれでもそうですが、限られたスペースで歩行・体動が制限されることに加え、十分な水分補給ができないなどにより脱水をきたし、静脈に血栓が生じやすくなると考えられています。特に汗をかきやすい夏にはしっかり水分を摂取しないと熱中症だけでなく、血栓リスクも高まりますのでご注意ください。急に片脚が腫れて痛みがある場合には静脈血栓のせいかもしれません。放っておくとはがれて心臓や肺血管に流れて重症化するかもしれませんので、早めに受診してください。
桑名西医療センターでは、三重大学 成田正明教授による小児診療内科を開設しました。
小児診療内科(非常勤) 成田 正明医師
対象 自閉、多動、学習障害、場面緘黙(ばめんかんもく)、
発達遅れ等でお困りのお子さん
診療時間 第2・4火曜日 午後1時~5時 ※完全予約制
予約方法 平日午後2時~5時に電話でご予約ください。
TEL (0594)-22-7111
○診断と適切な対応が大切
「落ち着きがなく、じっとしていられない」「こだわりが強すぎて融通がきかない」など子供の発達でお困りの方は少なくないのではないでしょうか?
これらの症状は、人とのやり取りがうまくいかない自閉症や落ち着きがない注意欠陥多動性障害などの発達障害の可能性が考えられます。発達障害は生まれながらの脳機能の障害で、その原因はわかっておらず、根本的な治療法はありません。しかし、専門機関できちんと診断を受けて、一人ひとりに合った支援をすることで症状を改善することができます。
○生活リズムの改善を
診察では、これまでの成育歴(いつしゃべり始めたかなど)、睡眠や食事などの生活リズムについてお聴きします。自閉症や多動症は、脳内ホルモンのアンバランスが関係するとも言われており、「早寝・早起き・朝ごはん」の生活リズムを直すだけだで良くなることが少なくありません。生活リズムを整える工夫をみんなで考え、時にはお薬を少量ずつ試すこともあります。
○自己肯定感を高める
その他、褒められる、継続的なお手伝いをして認められるという経験から自信をつけ、自尊心や自己肯定感を育むことで不思議なほど改善します。これにはちょっとした褒めることを探すという点で細かい観察が求められ、私たちも保護者の方も努力が必要です。